文弥


深川の江戸資料館で”文弥展”を観た時のことだ。江戸の町並みを再現した展示室の長屋は出入自由で、座布団の上に寝転がっていた。そこに文弥の弟子らしい2人組の”新内流し”が現れた。文弥の言うように、「猫の頭を撫でながら、たたみいわしを肴に日本酒を一杯やれればそれでいい」という心持ちになった。”新内的”を書いたのは、平岡正明だ。面白い連中がいる面白い時代を生きた。今の時代に青春を生きていたら、しんどかっただろうなと思う。無限のはずの想像力は萎縮し、不埒も異端もファッションにすぎない。思考停止をしなければ生きづらい時代だ。