ゾンビ


『われわれの美徳は、ほとんどの場合、偽装した悪徳にすぎない』 ラ・ロシュフコー

ロメロゾンビ映画を観たのは新宿伊勢丹の交差点近くにあった映画館だった。それまでのゾンビ映画は、南の島に行った白人の前にブードゥー教の呪術で蘇った死者が現れ…という第三世界に対する侮蔑映画だ。ポスターに惹かれて入った映画館で観たロメロの映画は違った。痛快だった。人間は欲望のままに、考えらないようなとんでもないことをしでかしてしまう存在であり、虐げられたものたちの終わりなき大逆襲が始まったように思えた。いつかゾンビが世界を覆い尽くした時、人はようやく安息の土に還ることができるのだろう。