女の平和


高校生の時に、人文書院の『ギリシア悲劇全集』全4巻を購入したのは、パゾリーニの映画『アポロンの地獄』を観たからだった。しかしギリシャ喜劇には触れたことがない。『女の平和』も週刊文春の書評欄で初めて知った。アテネとスパルタとのペロポネソス戦争の最中に書かれた作品で、女性たちが会議を開き、戦争を終わらせるためにセックス・ストライキをする。そして戦争は終わり、歓喜の歌に包まれるという下ネタ満載の喜劇だ。
雄は”競争する性”で、雌は”選択する性”であるが、世界中の雄の指導者が”反知性”になる衆愚政治の状況は、あまりにも愚かしく恥ずかしい。一度、すべての男が表舞台から退場する世界を見てみたい。女はどんな選択をするのだろうか。競争に負けた男と選択する相手がいない女、近代型社会システムは少数の勝ち組と大多数の負け組という二極社会の中で暴走していく。従属する安息と自己の権威化への渇望、そして破壊衝動へ。
常識や規範を疑うことだ。女が男を襲う社会、女性が自由に多数の男と関係を持つ”父親不在の社会”は、わずかだが現存している。そこではすべての子供が、誰もが守るべき”社会の子供”である。