君の友だち


店を始めてからまったく行くことがなくなってしまった古本屋だが、やめてからは月に一度のぞいてみるようになった。半年くらい前だったろうか。古本屋を巡り酒も入った帰り、最終電車の時間が迫っていて走っていると、画家のSととある駅前でバッタリと出会った。S君が「キスをしよう」というので、ハグしてキスをし(男です)、「じゃあ、また飲み会でもあったら」と駅へと走り出そうとした時だ。女性が駆け寄り、「テレビ東京ですけど」とマイクを出したのだった。時間がないので、そのまま駅の構内へと走った。いやあ、とてもじゃないけど深夜の番組で観るような、波乱万丈の感動的な話や悲惨な話などあるわけもない。淡々と何事もなく年を重ねている。飲みに行っても、特に報告することもなく金もない。何もなく、また一年が過ぎた。
ジェームス・テイラーも同じように年をとったけれど、いい感じです。