不滅の男


去年の暮れの事だ。夜明けも近く、そろそろ寝ようかとテレビのチャンネルを変えていると、スタジオライブの番組をやっていた。番組欄を見ると遠藤賢司の名前があったので、日本酒を継ぎ足しに行った。
時代の空気が変わったと思える年がある。1995年は阪神・淡路大震災地下鉄サリン事件があり、そこから暗く重たい空気が流れ始めた。1968年は逆にアヴァンギャルドで自由な空気を感じた年だ。その頃のテレビに、当時流行した「アングラ文化」を紹介する番組があった。その番組で天井桟敷の「時代はサーカスの象にのって」という演劇を映した回があり、その舞台でギターを弾きながら「夜汽車のブルース」を歌っていたのが遠藤賢司を観た最初だったと思う。
いつの時も、好きな本や映画や音楽や美術などはあるが、特に何かにはまるという事もなく通り過ぎていく。しかし、元気が欲しいと思える酔った夜に、時々遠藤賢司ニール・ヤングを聴きたくなるのはあの頃も今も変わらない。去年のラジオ番組で、結局最後になってしまった次のライブの話をしていた時だったろうか。これからやりたい事はと聞かれた彼は、「ニール・ヤングと同じステージにたつ」と語っていた。
もう何年も、大日本帝国への回帰のような嫌な風が吹いている。明治から大正デモクラシーエログロナンセンスの時代になったように風向きが変わって欲しいと思いながら、遠藤賢司を聴いている。