邦楽

昆虫愛を語る養老孟司は本当に楽しそうだ。それは不思議で美しく、手放しで賞賛できるものなのだろう。人を語れば、 苦々しい思いややりきれない気分を感じてしまうことにもなる。なにしろ人は都合よくデータを改竄し、歴史を書き換えてしまう生き物なのだ。…

棄民

この国の新自由主義については何度か書いた。新自由主義とは『規制緩和、民営化、社会福祉費の削減』である。少数の勝ち組と大多数の負け組という二極化が進み、その歪みを補完する存在であってほしい地方自治体でも、極端な新自由主義を進める政党が大勝を…

猫のいた日々

休日散歩から帰った深夜、猫は炬燵のいつも私が座る場所にいた。膝の上にのってきたので、それからまた一杯やっているうちに、そのままふたりとも眠ってしまった。昼頃は布団で寝ていたのだが、猫もノロノロとまた横にきて一緒に二度寝をした。しかしその夕…

早春

昨年末に放送されていた連続ドラマ、”エルピス”を観ていた。権力者が連続殺人の犯人を隠蔽し、冤罪事件を生むという話だった。警察は捜査を放棄し、メディアは冤罪者の誤った人物像を書き立てていく。ちょうどその頃、NHKでは”松本清張と帝銀事件”をやってい…

年末の夜に’22  

『夜の夢こそまこと 人間椅子小説集』という本が、先日出版された。この”人間椅子”は江戸川乱歩の小説ではなく、 乱歩に影響を受けたバンドの人間椅子の事で、その楽曲を題材にして書かれたオムニバスの小説集である。1989~90年にバンドブームを起こしたイカ…

有り難や

NHKでは今、宇宙論の他に数学の番組もやっている。先日は望月新一のABC予想の証明、『宇宙際タイヒミュラー理論』を芸人のパンサー尾形が解説していたが、否定的な数学者もいる理論でほとんどわからない。未見だが、10数年前に物理学者のリサ・ランドールと…

CRAZY

子どもの頃、クレイジーキャッツの映画をよく観に行った。たいていは二本立でゴジラや若大将のシリーズと併映されていたのだが、それよりもガハハと笑い、踊り歌う植木等の映画が好きだった。もっともらしい顔をして道徳などを語る人こそが不道徳で無責任で…

音頭

“生命の意味論”を書いた多田富雄が、10数年前にウイルス学者と対談をした事がある。その時に、ウイルスに対抗できるとすればキラーT細胞に直接働くDNAデザインワクチンしかないが、その完成は不可能だろうと語っていた。他の国が開発から撤退をする中で、研…

真夏

真夏の真夜中に日本酒を飲んでいる。”プカプカ”という西岡恭蔵の広く知られた曲がある。この曲が”ディランll”名義で最初に発売された時は、”みなみのぶるうす”という副題がついていた。この”みなみ”は、ジャズシンガーの安田南の事だとあの頃の誰もが思って…

いき

パソコンというのは5年も経つと様々な不具合が起こる。検索をして対処法が出てくる症状なら良いが、どうにもならない未知の症状も多い。さらに使っているサイトが、古いOSには対応しなくなったりする。スマホではそのサイクルが3年だというから怖い。今は皆…

まあ

店をやめて営業時間に縛られなければ、自由になれるかと思っていたが、”いつでも”という言葉は”今日でなくても”と同義語だった。”いつか”と思っている内に時は過ぎ、そのうちに店や町のいたるところが禁煙になり、コロナ渦になっていよいよ行けるところが”誰…

俗曲

私たちが自由意思で選んでいると思っている趣味嗜好は、社会階級や文化資本によって選択をさせられている。”100分de名著”でブルデューの”ディスタンクシオン”をやっていた。小説や音楽や絵画といった文化との出会いに天の啓示のようなものはなく、社会構造に…

深夜の猫

猫の話は何度も書いている。それでも、木枯らしの季節になるとまた、長毛の巨大な白猫の事を思い出すのだ。長い間、玄関が引き戸の風呂なし安アパートに住んでいた。そこにはさまざま人がいて、いろいろな事があったのだが、それはまた別の話としておこう。…

誰かが

『宗教や伝統的美徳の中で最も確実で確固たるものにみんな戻っていいのだと思うーつまり貪欲は悪徳であり、高利の収奪は不品行であり、金銭愛は軽蔑すべきもので、最も着実に美徳と正気の叡智の道を歩く者は、未来のことを最も考慮しいものだ、という美徳だ…

歩道橋

歩道橋の上から街を眺めていると人の数は減り、人と人との距離も随分と広がったように見える。感染をすれば村八分のような扱いをされるといった事も起こり、人の心は荒んでいく。世界が不確定である事に耐えられず、良い人には良い結果が、悪い人には悪い結…

いいんだぜ

“更級日記”は平凡な一生を送った女性が、人生を振り返るという内容だ。父が任期を終え、上総から都へと旅をする道中がかなり長く書かれている。晩年に「あの頃の私はバカだったなあ」と少女の頃を思い起こすのだが、都の暮らしを夢み、”源氏物語”の世界に憧…

青空

「わたしもインディアナ州で ほかのみんなのように のらくら暮らしていたが とつぜん体のなかから あるものが湧きだした それは文明への嫌悪だった」 ー カート・ヴォネガット 『江戸にフランス革命を!』と書いたのは橋本治だ。絶対君主制に対するフランス…

ケータイ

ケータイは持っている。家人が仕事で必要ということで販売店に行くと、『家族割がお得』と言われて私の分も購入してきたのだ。しかし店の営業時間中はずっと電話の前にいるので、まったく使う必要がない。その内に街から公衆電話が消えて、お客からの依頼で…

ケ・サラ

直射日光の中をビールを飲みながら歩いていると脱水症状になる。暑さを逃れて木陰へと行けば蚊やダニに襲われる。夏が好きな人はエアコンの効いた部屋で、白い砂浜の画像を見ながら夏らしい音楽を聴き、冷たいカクテルでも楽しんでいるのだろう。75億人のす…

歌姫

よく飲み歩いていた若い頃、帰ってひとりの部屋で聴く中島みゆきのレコードが心に沁みた。2ヶ月違いで生まれた”歌姫”と同時代を生き、数十年たった今でも変わらずに歌い続ける姿を観る事ができるのは幸福な事だ。その歌声を聴けば、虚勢や欲望もなく素直に言…

四人囃子

“たまら・び”最新号の特集、”蒐集家ものがたり”の中のイメージカットに店の写真が使われていた。はやいもので、店をやめてもうすぐ3年になる。高価なものから家賃に変わっていったので、あれから延々と均一本の整理を続けている感じだ。店のお客だったとうい…

生活の柄 2

集団行動が苦手だった。子供の僕は子供が嫌いで、幼稚園にいく事ができない。小学生になっても机の前でジッとしていることが苦痛だった。それは高学年になるにつれ段々と薄れていったが、そこが居心地が悪い場所であるという事に変わりはなかった。学校の図…

どうにかなるさ 2

日時を調節して誰かと飲みに行くというのも何かと億劫だ。第一、飲みたいのはいつかではなく今なのだ。フラリと顔を出せば顔見知りがいる、行きつけの飲み屋もなくなった。店をやめ散歩が愉しい季節になれば、缶ビールでも持って訪ねたいと思っていた知り合…

峯田

NHKの朝ドラ”ひよっこ”で、茨城の叔父さん役の峯田が「ビートルズがやってくる」と騒いでいる場面を観ていたら、”銀杏ボーイズ”が聴きたくなった。元気が出ます。

文弥

深川の江戸資料館で”文弥展”を観た時のことだ。江戸の町並みを再現した展示室の長屋は出入自由で、座布団の上に寝転がっていた。そこに文弥の弟子らしい2人組の”新内流し”が現れた。文弥の言うように、「猫の頭を撫でながら、たたみいわしを肴に日本酒を一杯…

FOREVER YOUNG

店を始めた頃、店を開ける前に近くの珈琲店でゆったりと一服するのが常だった。それから何年か経った頃だ。なんとなく居心地の悪さを感じ始めていたある日、珈琲店の客だったバイク乗りが「信号待ちの路上でくわえ煙草をしていた男の煙草をもぎとり踏み消し…

ふざけるんじゃねえよ

桜は開花したが曇り空の寒い日が続いていて、テレビをつければ新しい道徳教育を押し進める人たちには道徳のかけらもない。何もかもがパッとしないと思える日、カーラジオから"頭脳警察"が流れてきた。

コール・ミー

カーラジオから流れてきた。元気がでます。

どうにかなるさ

店のある町には、なけなしの年金で暮らしているような人も多かった。どちらにせよそれで暮らせるわけではないので、その金で酒を飲み競輪場に行けばすぐに消えてゆくのが常だ。金がなくなるとどこかの家の片付けの手伝いなどをして、そこででた不用品をリサ…

泣ける歌

テレビをつけると”泣ける歌特集”といった番組を観ることがあるが、それらの曲で泣けたことがない。岡林信康が貧困や差別を歌い、その後社会変革を歌った頃の曲は後楽園で観た黒テントの”翼を燃やす天使たちの舞踏”という演劇の幕間でライブで聴いた記憶があ…